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金沢地方裁判所 昭和48年(ワ)87号 判決 1974年4月30日

原告 石丸秋次

右訴訟代理人弁護士 中村吉輝

右訴訟復代理人弁護士 山崎利男

被告 国

右代表者法務大臣 中村梅吉

右訴訟代理人弁護士 中村三次

右指定代理人 笠原昭一

<ほか四名>

被告 高島清司

主文

一、被告国は原告に対し金八〇八、五〇七円及び内金七〇八、五〇七円に対する昭和四六年四月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告の被告国に対するその余の請求及び被告高島に対する請求はこれを棄却する。

三、訴訟費用は、原告と被告国との間においては、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告国の負担とし、原告と被告高島との間においては、全部原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

1  被告らは連帯して原告に対し金二、一四六、七七八円及び内金一、九六六、七七八円に対する昭和四六年四月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言。

二、請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一、請求原因

1  事故の発生

原告は、次の交通事故によって傷害を受けた。

(一) 発生時 昭和四六年四月二五日午後二時五〇分頃

(二) 発生地 金沢市円光寺町一丁目五三番地先路上

(三) 加害車 軽四輪貨物自動車(以下「郵便車」という。)

運転者 被告高島

(四) 被害車 原動機付自転車(以下「原付自転車」という。)

運転者 原告

(五) 態様  交差点において西から東へ進行しようとした被害車に、北から南へ進行しようとした加害車が衝突

2  責任原因

(一) 被告高島は、郵便車を運転して右事故発生地の交差点にさしかかったものであるが、その際、交差点の左右の側から出てくる車両の有無を確め、且つ道路の左側を通行して交差点に入らなければならない注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、漫然毎時四〇キロメートルの速度で、且つ道路の右側を進行して交差点に入ったため、おりから右方道路より交差点に直進してきた被害車に衝突し、原付自転車を約四メートル引きずって原告を路上に転倒させたものである。したがって、被告高島は民法第七〇九条の規定により損害賠償責任を負う。

(二) 被告国はその設営する北陸郵政局金沢南郵便局において、被告高島を雇用し、且つ郵便車を保有していたものであり、本件事故は被告高島が郵便車を運転して右郵便局の業務を執行中に惹起したものであるから、被告国は自動車損害賠償保障法第三条の規定により損害賠償責任を負う。

3  損害

原告は、本件事故により、脳挫傷、右腎被膜下損傷、左足部顔面挫創、両膝部腰部肩胛部挫傷の傷害を受け、昭和四六年四月二五日から同年七月二四日まで金沢赤十字病院に入院し、同月二七日から昭和四七年四月七日まで同病院に通院した。右傷害による原告の損害は次のとおりである。

(一) 治療費   一、〇五〇、四七八円

(二) 付添看護費 一四、〇〇〇円

原告の母の訴外石丸清見が昭和四六年四月二五日から同年五月八日まで付添看護をしたので、一日一、〇〇〇円の割合による一四日分の付添看護費を請求する。

(三) 入院雑費 二七、三〇〇円

一日三〇〇円の割合による入院期間九一日分の雑費。

(四) 逸失利益 六三〇、〇〇〇円

原告は、石丸米穀販売店に勤務し、一か月六〇、〇〇〇円の賃金及び夏と冬の各一五〇、〇〇〇円の賞与を得ていたものであるが、本件事故による入院及び通院のため、昭和四六年一二月末日まで欠勤せざるを得なくなり、同年五月から同年一二月までの賃金及び同年冬の賞与を得ることができず、合計六三〇、〇〇〇円の損害を受けた。

(五) 慰藉料   七四五、〇〇〇円

(六) 損害の填補 五〇〇、〇〇〇円

(七) 弁護士費用 一八〇、〇〇〇円

以上により、原告は被告らに対し一、九六六、七七八円を請求し得るところ、被告らが任意の弁済に応じないので、弁護士たる原告訴訟代理人にその取立を委任し、謝金として一八〇、〇〇〇円を第一審判決言渡期日に支払うことを約した。

よって、原告は被告らに対し、以上合計金二、一四六、七七八円の損害賠償金と、弁護士費用を控除した内金一、九六六、七七八円に対する事故発生日の昭和四六年四月二五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう請求する。

二、被告らの請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。但し、被告高島が事故起因者である点は争う。

2  請求原因2の(一)は争う。同2の(二)の事実関係は認めるが、被告国が損害賠償責任を負うとの点は争う。

3  請求原因3のうち(六)は認めるが、その余は不知。

4  なお、原告は遅延損害金の起算日を一律に本件事故発生日としているが、起算日は現実に損害が発生した日、例えば治療費についていえば、原告が現実に支払った日又は原告が被告らに請求した日を起算日とすべきである。

三、被告国の抗弁

1  免責の抗弁

本件事故は原告の重大な過失によって発生したものであり、被告国及び運転者である被告高島は郵便車の運行に関し注意を怠っておらず、郵便車に構造上の欠陥又は機能の障害もなかったので、被告国は損害賠償責任を負わない。

すなわち、本件事故現場は、交通整理の行なわれていない見とおしの悪い交差点であるが、被告高島が赤塗りの郵便車を運転し、原告の進行道路より明らかに広い幅員約五・四三メートルの道路を時速約一五キロメートル程度で北方より南方に向けて進行し、原告より先に同交差点に進入して直進しようとしたところ、幅員約二・五八メートルの右方道路より原告が原付自転車を運転し、一旦停止又は徐行もせず、且つ左右の安全を確認することもなく、西方より東方へ通り抜けようとして、既に交差点に進入していた郵便車の前に飛び出したため、本件事故が発生したものである。

本件事故発生当時施行されていた改正前の道路交通法第三五条第一項及び第三項並びに第三六条第二項及び第三項によれば、交差点においては先入車優先、左方車優先及び広路車優先が認められていたから、被告高島はいずれの点よりするも優先通行権を有していたものであり、原告が交差点手前で徐行又は一時停車して衝突を避けるための適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足り、それ以上徐行するなどの義務はない。したがって、被告高島には何らの過失もない。

なお、被告高島が進行していた道路は幅員約五・四三メートルのセンターラインのない道路であるが、前記交差点南東角の道路に小型トラックが駐車していたため、これとの衝突を避けるために被告高島はやむを得ず道路右寄りを通行した。しかし、被告高島に優先通行権のあったことには変りなく、同被告が右寄りを通行したとしても徐行義務を負うものではない。また、被告高島が道路左寄りを通行していたとしても、双方の距離速度関係からして衝突は避け得なかったものであり、被告高島の右側通行と本件事故との間には因果関係がない。

2  過失相殺の抗弁

仮に、被告高島に過失があるとしても、事故発生について原告の右過失も寄与しているのであるから、賠償額算定につきこれを斟酌すべきである。

3  相殺の抗弁

被告国も本件事故によりその所有する郵便車を破損され、修理費に四四、七六五円を要し、同額の損害を受けた。本件事故の発生につき原告にも重大な過失があるから、原告は被告国の受けた損害を賠償すべきである。そこで、被告国は、昭和四八年九月二〇日の本件口頭弁論期日において、右損害賠償債権をもって原告の本訴債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

四、被告高島の抗弁

1  公務執行中の事故

被告高島は郵政事務官として郵便業務に従事中に本件事故を惹起したものであるから、原告に対し被告国が賠償責任を負うことはあっても、被告高島は原告に対し直接賠償責任を負うものではない。

2  過失相殺の抗弁

三の2に同じ。

五、被告らの抗弁に対する原告の認否

全て争う。

本件交差点は、住宅地内にあり、歩行者や二輪車の往来が激しく、交通整理も行なわれておらず、見とおしも悪いのであるから、自動車運転者としては徐行義務を負うものというべきである。また、本件交差点には、原告の方が先に進入していたものである。

第三証拠≪省略≫

理由

一、事故の発生

昭和四六年四月二五日午後二時五〇分頃、金沢市円光寺町一丁目五三番地先交差点において、被告高島の運転する郵便車が原告運転の原付自転車に衝突したことは、当事者間に争いがない。

二、事故の態様

1  ≪証拠省略≫によると、次の事実が認められる。

本件交差点は、住宅街の中にあって南北の道路と東西の道路が直角に交差しており、交通量が比較的閑散で、交通整理の行なわれていない交差点である。その形状は別紙図面のとおりであるが、南北の道路も東西の道路も歩道と車道の区別のないアスファルト舗装道路であって、いずれも両側に住宅が並んでおり、左右の見とおしは極めて悪い。特に、北西の角附近は高さ約一・二六メートルの石塀で囲まれており、北側道路と西側道路との間の見とおしはきかない。南北の道路は幅員約五・四三メートルである。東西の道路のうち交差点の東側道路は幅員約五・四三メートルであるが、西側道路は幅員約二・五八メートルである。

なお、本件交差点の範囲は、別紙図面のアイウエオカア点を順次結んだ直線で囲まれた部分と解される。

2  ≪証拠省略≫によると、次の事実が認められる。

原告は、本件交差点の西側道路を原付自転車を運転して東に向け進行し、南方向を見て左足を地面につけながらゆっくりと交差点に進入した。

被告高島は、本件交差点の北側道路の右側寄り(道路右端との間隔は約一メートル)を郵便車を運転して南に向け時速二〇キロメートル前後で進行し、交差点内に約二メートル入った地点(別紙図面B点)に来た時、原告が西側道路の交差点より約〇・八五メートル手前で道路左端より約一・四〇メートルの地点(別紙図面A点)に来ているのを発見し危険を感じたが、何らの措置もとらずそのまま約三・八〇メートル進行して、原告の運転している原付自転車と衝突した。そして、右衝突地点(別紙図面X点)より約一〇・七〇メートルの地点(別紙図面C点)まで原付自転車を引きずって、ようやく停止した。また、右衝突により原告を約九・三〇メートル斜め前方の地点(別紙図面D点)まではね飛ばした。

被告高島本人は、右衝突の直前危険を感じてブレーキを踏み、道路上にも郵便車のスリップ痕があったと供述し、証人山下松寿も郵便車のスリップ痕があったと証言しているが、事故直後に警察官が行なった実況見分の調書には、郵便車のスリップ痕はなかったと記載されており、更に郵便車が衝突地点から約一〇・七〇メートルも進んで停止していること、原告を約九・三〇メートルも先にはね飛ばしていることなどの事実に照らすと、被告高島はブレーキを踏まなかったものと認定するのが相当である。その他、前記認定を覆すに足る証拠はない。

三、責任原因

1  被告国が郵便車を北陸郵政局金沢南郵便局の業務用に使用し、自己のために運行の用に供していたことは、当事者間に争いがない。

2  被告高島が北陸郵政局金沢南郵便局勤務の郵政事務官であり、同郵便局の業務執行中に本件事故を惹起したことは、当事者間に争いがない。

したがって、国家賠償法第一条の趣旨に照らし、本件事故による原告の損害については、被告国が賠償の責に任ずるのであって、被告高島個人は原告に対し直接その責任を負うものではない。

よって、原告の被告高島に対する本訴請求は、その余の点に判断するまでもなく、失当といわなければならない。

四、免責

本件事故の態様は前記のとおりであり、これによると、被告高島運転の郵便車が進行していた南北の道路の幅員は約五・四三メートルで、原告運転の原付自転車が進行していた西側道路の幅員約二・五八メートルより明らかに広いので、昭和四六年法律第九八号による改正前の道路交通法(以下「道交法」という。)第三六条第三項の規定により、郵便車に優先通行権が認められる。また、郵便車は原付自転車より先に交差点に入っていたのであるから、この点からも道交法第三五条第一項の規定により郵便車に優先通行権が認められる。更に、郵便車は原付自転車にとって左方の道路から本件交差点に入ってきたものであるから、道交法第三五条第三項の規定によりこの点においても郵便車に優先通行権が認められる。

被告国は、郵便車は右のように優先通行権を認められていたのであるから徐行義務を負わない、と主張する。しかし、優先通行権を有する者には、道交法第四二条所定の徐行義務がないと解するにしても、本件のように、交通整理が行なわれておらず、右方の見とおしがきかず、しかも交通事情が比較的閑散で徐行による交通の渋滞混乱を招くおそれが少ない交差点において、左側通行の原則に反して道路右側を通行する運転者には、同法第七〇条所定の安全運転義務の具体的内容として、優先通行権を有していてもなお徐行義務を負うものと解するのが相当である。

そして、前記認定事実によれば、被告高島は右注意義務を怠り、時速二〇キロメートル前後で漫然進行した過失があるものといわざるを得ない。

なお、前掲証拠によると、被告高島は自己の進路前方左側に小型貨物自動車が駐車していたため、道路右側を進行したものと認められるが、このことは右の徐行義務を左右するものではない。

また、優先通行権が認められていたとしても、その故をもって交差点を進行するにあたり右方から来る車両の有無及びその動静に注意を払うべき義務が免除されるものと解すべきいわれはなく、右方から交差点に入ろうとする車両を認めた場合には、速やかに警音器の吹鳴、停車、左転把その他機宜の措置を講じ、もって事故発生を未然に防止すべき義務があるものといわなければならない。

しかるに、被告高島は、右注意義務を怠り、原告運転の原付自転車を発見して危険を感じてからも何らの措置もとらず、漫然前記速度のまま進行して原付自転車に衝突し、衝突後約一〇・七〇メートルも原付自転車を引きずってようやく停車するという過失を犯したものといわざるを得ない。

本件事故の発生につき被告高島に右のような過失が存する以上、被告国の免責の抗弁は、その他の点を判断するまでもなく、失当である。

よって、被告国は、自動車損害賠償保障法第三条の規定により、本件事故による傷害のため原告が受けた損害を賠償すべき責任を負う。

五、過失相殺

前記認定事実によると、本件事故の発生につき、原告には左方安全確認義務違反及び優先車進路妨害の過失があったものと認められるところ、原告の右過失と被告高島の前記過失との割合は、原告五、被告高島五と認めるのが相当である。

被告高島には優先通行権が認められること前記のとおりであるが、右方の見とおしのきかない本件交差点を道路右側寄りに進行しながら徐行せず、危険を感じてからも急制動等の措置を全くとらず約九・三〇メートルも先に原告をはね飛ばした過失は決して軽視できず、その他原告が原動機付自転車を運転し、被告高島が軽四輪貨物車を運転していたことなどを考慮し、右のとおり認定する。

六、損害

≪証拠省略≫によると、原告は本件事故により脳挫傷、右腎被膜下損傷、第三中足骨複雑骨折、両膝部腰部肩胛部挫傷及び顔面挫創の傷害を受け、金沢赤十字病院に昭和四六年四月二五日から同年七月二四日まで九一日間入院し同月二七日から昭和四七年四月七日まで(実治療日数七三日間)通院したが、頭痛、頭重及び軽度の感情障害を残す後遺障害により自動車損害賠償保障法施行令別表第一四級第九号に該当するとの認定を受けたことが認められる。

1  治療費

≪証拠省略≫によると、原告は一、〇五〇、四七八円の治療費を要したことが認められるが、前記割合に応じ過失相殺すると、被告国の負担すべき額は五二五、二三九円となる。

2  付添看護費

≪証拠省略≫によると、原告は昭和四六年四月二五日から同年五月八日まで付添看護を要し、母親の石丸清見が付添ったことが認められ、その費用として一日一、〇〇〇円の割合による一四、〇〇〇円を要したものと認められるが、前記割合による過失相殺をすると、被告国の負担すべき額は七、〇〇〇円となる。

3  入院雑費

原告は九一日の入院期間中一日三〇〇円の割合による入院雑費二七、三〇〇円を要したものと認められるが、前記割合による過失相殺をすると、被告国の負担すべき額は一三、六五〇円となる。

4  逸失利益

≪証拠省略≫によると、原告は石丸米穀販売店に勤務しているところ、本件事故による休業のため原告主張どおり六三〇、〇〇〇円の給与を得られなかったものと認められるが、前記割合による過失相殺をすると、被告国において賠償すべき額は三一五、〇〇〇円となる。

5  慰藉料

原告の傷害の程度、治療経過、過失割合等前記諸事実を考慮し、原告の精神的損害を慰藉すべき額は三七〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

6  損害の填補

原告が自動車損害賠償責任保険から五〇〇、〇〇〇円の支払を受けたことは当事者間に争いがない。

7  相殺

被告国は、昭和四八年九月二〇日の本件口頭弁論期日において、被告国が本件事故により郵便車を破損されて受けた四四、七六五円の修理費相当額の損害賠償債権をもって原告の本訴債権と対当額につき相殺する旨意思表示したので、この点について判断する。

≪証拠省略≫によると、被告国所有の郵便車も本件事故により損傷を受け、被告国はその修理費として四四、七六五円を支出したことが認められる。

被告国は、右損害をもって原告の本訴債権と対当額につき相殺すると主張するが、右損害のうち原告において負担すべき額は前記過失割合に応じた二二、三八二円である。

したがって、被告国の相殺の抗弁は、二二、三八二円の限度で理由がある。

なお、右のような同一事故に基づく不法行為債権相互間の相殺には、民法第五〇九条の適用はないと考える。

8  弁護士費用

以上により、原告は被告国に対し七〇八、五〇七円を請求し得るものであるところ、≪証拠省略≫によれば、原告は弁護士である本件原告訴訟代理人に右債権の取立を委任し、謝金として第一審判決言渡期日に一八〇、〇〇〇円を支払うことを約した事実が認められるが、右認容額、本件訴訟の経過等に鑑み、被告国において負担すべき弁護士費用の額は一〇〇、〇〇〇円をもって相当と認める。

七、以上の理由により、被告国は原告に対し八〇八、五〇七円及び内金七〇八、五〇七円に対する本件事故発生日の昭和四六年四月二五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で理由があり、原告の被告国に対するその余の請求及び被告高島に対する請求は失当である。

なお、被告国は遅延損害金の起算日は支払の日又は請求の日とすべきであると主張するが、不法行為に基づく損害賠償債務(弁護士費用を除く。)は不法行為成立の時から遅滞に陥るものと解すべきであるから、右主張は失当である(最高裁昭和三四年(オ)第一一七号昭和三七年九月四日第三小法廷判決、民集第一六巻第九号一八三四頁参照)。

よって、本訴請求中理由のある部分を認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条及び第九二条本文の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 泉徳治)

<以下省略>

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